化石発見の経緯について
平成25年4月6日に、北林栄一氏(元大分県玖珠町立日出生中学校教諭)が佐伊津層(さいつそう)の分布する天草地域より多くの足跡化石を発見されました。その時の写真が、岡村喜明氏(滋賀県栗東市在住、滋賀県足跡化石研究会)に送られ、足跡化石であることを確認されました。また、同時期に北林氏から御所浦白亜紀資料館にも連絡が寄せられました。
4月12日に、その連絡を基に御所浦白亜紀資料館で現地調査を行い、シカ類とその他の哺乳類の足跡(後の調査でサイ類と確認)を確認しました。
本格的な予備調査は、5月20~22日に、岡村氏、北林氏、御所浦白亜紀資料館で行いました。結果、多数の足跡化石が確認でき、サイ類(奇蹄類)、シカ類とみられる偶蹄類、ツル類とみられる大型鳥類の足跡化石があることが判明しました。6月6日にも、再度、御所浦白亜紀資料館で現地調査を行っています。
化石の発見された地層と化石について
口之津層群佐伊津層と呼ばれる地層から発見されています。地層や化石の様子から、河川周辺のぬかるんだ泥の上に残された足跡で、河川の周辺には木が生えていました様子が考えられます。当時に有明海は陸地であったこともわかっています。
今回の一連の調査で、佐伊津層下部(約300~260万年前と推定)からは、サイ類(奇蹄類)、シカ類とみられる偶蹄類、ツル類とみられる大型鳥類の足跡化石が含まれ、特にサイ類、偶蹄類の足跡は多く確認しています。ツル類は1点です。佐伊津層上部(約200万年前)からも、シカ類とみられる偶蹄類の足跡化石を複数確認しています。
化石発見の意義について
1. 熊本県内では、ゾウ類の骨や歯、シカ類の角化石が、天草地域および天草周辺の沖で、発見されている。シカ類とみられる足跡化石産地としては、天草地域からは初めての報告で、県内では人吉層の発見に続き2番目の報告となります。
2.県内初の報告となるサイ類およびツル類とみられる大型鳥類の足跡化石も含まれます。
3.サイ類の足跡化石は国内では主に約300万~260万年から知られ、天草に分布する佐伊津層の年代を絞り込む情報としても重要であると考えられます。
4.足跡はそこに動物が生きている時に残されるものであることから、確実に、天草地域に、かつてサイ類、シカ類とみられる偶蹄類、ツル類とみられる大型鳥類が生息していたことがわかりました。(骨や歯などの化石は、死後、運搬されることがあるため、発見された場所に生息した確実な証拠とはなりにくい。)
保護と活用についての検討(課題)
現地の化石は非常に重要なものであるため、天草ジオパークにおいて、今後、保護と活用の可能性を検討していきます。しかし、現時点としまして、化石の保護、現地は非常に滑りやすく転倒等の事故の可能性が非常に高いこと、周辺環境への配慮などから、現地の一般公開は現在のところ未定です。 |

【図1】足跡化石の発見された天草市五和町から本渡地区にかけての位置(赤く囲った位置)
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【図2】サイ類の足跡化石
当初ゾウ類のものと思われましたが、
サイ類の前肢と後肢の足跡がいくつか
重なった状態であることが判明しました。
(約300~260万年前)
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【図3】サイ類の足跡化石
前肢と後肢の足跡が重なった状態で、
後肢の足跡の長さは 約17cmです。
(約300~260万年前)
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【図4】シカ類とみられる偶蹄類の足跡化石
複数の足跡が見られます。
足跡の長さは おおよそ5cm前後です 。
(約300~260万年前)
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【図5】ツル類とみられる大型鳥類の足跡化石
1つだけ発見されました。
足跡の長さは 約15cmです 。
(約300~260万年前)
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